食品分析表示は食の安全と信頼性を高めるための重要な取り組みです。詳細な栄養成分を表示することは、消費者の安心につながるだけではなく、販売者の社会的信用の向上にも役立ちます。この食品分析は自社の製品にあった試験を選ぶことが大切です。
そこで今回は依頼する前に知っておきたい、基本的な食品分析の予備知識についてまとめてみました。
食品分析とは食品に含まれるさまざまな成分を調べるための検査です。代表的な検査には「食品栄養成分検査」「アレルギー物質検査」などがあり、こうした検査結果は、加工食品のラベルなどに消費者に分かりやすく表示することが義務づけられています。
検査項目にはほかにも「残留農薬検査」「細菌・ウイルス検査」「カビ毒検査」「放射線濃度検査」などさまざまな項目が用意されており、食品を販売するためには各項目に定められた基準値をクリアする必要があります。こうした食品分析を実施する意義は食の安全性が向上することです。
また、結果を通じて自社が提供する食品を客観的に分析できるようになり、リスク管理の質が大幅に向上するといったメリットなども得られます。
食品分析は法令に基づく検査です。厚生労働省の指針に従い各都道府県や自治体が運用の中心を担っています。また、食品分析の検査自体はさまざまな施設で受けられるものです。必ずしも公的機関で検査を受ける必要はありません。
法令の指針に基づく検査を受けられるのであれば、民間企業に検査を委託しても全く問題とはならないからです。ただ、食品分析を行う機関といっても膨大な数があります。自社に必要な検査を受けるためにも、まずは食品分析を実施している機関の特徴をよく把握しておきましょう。
公的な検査機関には「工業試験場」があります。この工業試験場は都道府県、国から委託を受けた独立行政法人、大学などが中心となって設置している機関です。工業試験センターなどの名称で運用されているところも多く、こうした機関では企業が持ち込んだ食品の「分析・検査・測定」などを行っています。
また、民間では導入が難しい高度な設備などを有しており、食品の加工販売などに役立つ、さまざまな分析や活動を実施しているのも大きな特徴です。一方、民間には工業試験場と同様の検査を実施する企業が数多くあります。
こうした企業では世界基準となるISOなどを取得し、検査の信頼性や各種サービスの向上に努めているのが特徴です。こうした企業の数は全国で100社を超えると言われています。これらの企業の多くは「厚生労働大臣登録食品検査機関」の認可を受けており、厚生労働省のホームページにある「食品登録検査機関一覧」などの資料で公表されています。
食品分析を民間に委託する際には、こうした資料なども参考にしながら決めるとよいでしょう。
ある食品の検査を依頼する場合、公的機関と民間機関のどちらを選んだ方がよいのでしょうか。結論から言えば、公的機関、民間のどちらを選んでも問題ありません。そもそも食品分析は科学的な手法に基づいて実施されており、適切な検査が行われていれば、どの検査機関を選んでも結果に大きな差は出ないからです。
民間の企業ではより精度の高い検査結果を提供するため、国際規格であるISO/IEC17025などの認定を取得し、厳しい監査も受け入れています。こうした点からも「厚生労働大臣登録食品検査機関」ならば「工業試験場」と変わらない精度の検査が受けられると考えてよいでしょう。
食品検査機関を選ぶ最初のポイントは、厚生労働大臣登録食品検査機関であること、認証資格を取得していることなどです。続いて自社が必要とする検査項目を満たしているかどうかも大切になってきます。ひとくちに食品分析といってもその検査項目は膨大です。
検査機関によっては対応していない場合もあるので、事前の確認が重要になってきます。また、食品分析は非常に専門性の高い検査です。依頼者側の理解や知識が十分に及ばないことも珍しくありません。こうしたときに的確なアドバイスができる機関なのかどうかも、依頼する側にとっては重要なポイントになってきます。
依頼したい製品が数多くある場合は費用などにも気を配るべきです。ただ、納得のいく検査結果を得るためにも、まずは口コミの評判や問い合わせの感触などを参考にして、自社のニーズに応えてくれると感じる機関に相談しましょう。
食品分析の結果はさまざまな所に活かせるものです。食品内に含まれる栄養素などの分析のほかにも、賞味期限の設定や食品に最適な容器の選定など、さまざまなことに役立てることができます。こうしたデータは、商品の開発だけではなく、製造時の衛生管理の向上にも役立つものです。
地域の保健所などでは食品加工会社に対して定期的な検査を実施していますが、食品分析のデータはこうした検査の時などに提出する資料としても使えるでしょう。また、食品検査機関では食の安全に寄与するさまざまなサポートを企業に対して提供しています。
食の安全・安心を達成するためには、常に最新の情報に触れておく必要もありますが、食品分析機関と密接なつながりを維持しておけば、海外などからもたらされる危険食材などに関する情報にもリニアに対応することができます。
アレルギー疾患の増加や食の安全性に対する危機感が高まった結果として、食品分析表示に対するニーズはますます高くなってきています。こうしたニーズに応えるためには自社が扱う製品への知識をより一層高めなくてはなりません。
たとえば自社のコールセンターに食品成分などに対する問い合わせがあった際に返答が出来なければそれだけで会社の信用は失墜してしまいます。食品分析の結果はこうしたリスクコントロールにも役立つものです。検査結果の内容を社内で共有できる体制を取っておけば、こうした問い合わせなどに対しても的確な返答が可能となりますし、従業員の食の安全に対する意識の向上などにも大きく役立てることができるのです。
食品分析機関は食の安全に関するエキスパートです。食品分析以外にもさまざまな相談が可能なので、食品などを扱っている企業は定期的に利用することをおすすめします。